
はじめに:極座標データの概要とpandasでの扱い方
極座標系は、平面直角座標系に代わる位置表現の一つで、座標を「半径」と「角度」で表します。この座標系で表現されたデータをpandasを使って効率的に処理する方法を紹介します。
まずは、極座標系とは何かについて簡単に説明します。極座標系は、原点からの距離(半径)と、x軸からの反時計回りの角度(極角)で位置を表します。つまり、直交座標系の(x,y)座標に対して、極座標系では(r,θ)で表現されます。
例えば、(3,4)の直交座標系の座標は、極座標系では(5,0.93)と表現されます。ここで、0.93はラジアン単位で表した角度で、約53.13度に相当します。
では、実際にpandasを使って極座標データを扱う方法を見ていきましょう。
極座標データの基本的な操作:座標変換とデータフレーム作成
極座標系で表現されたデータを、pandasで扱うためには、まずは座標変換を行います。つまり、極座標系から直交座標系に変換する必要があります。
座標変換は、以下の式で表されます。
1 2 | x = r * cos(θ) y = r * sin(θ) |
これをpandasで実現するためには、以下のようにします。
1 2 3 4 5 | import pandas as pd import numpy as np df = pd.DataFrame({ 'r' : [ 5 , 10 , 15 ], 'theta' : [ 0.52 , 1.05 , 1.57 ]}) df[ 'x' ] = df[ 'r' ] * np.cos(df[ 'theta' ]) df[ 'y' ] = df[ 'r' ] * np.sin(df[ 'theta' ]) |
上記のコードでは、まずはpandasとnumpyをインポートします。次に、極座標系で表現されたデータをデータフレームとして作成します。ここでは、’r’と’theta’の2つの列を持つデータフレームを作成しています。
次に、df[‘x’]およびdf[‘y’]の2つの新しい列を作成し、座標変換を行っています。これにより、極座標系から直交座標系に変換されたデータを含むデータフレームが作成されます。
また、極座標系のデータをpandasのデータフレームに変換することもできます。以下のように、極座標系のデータをNumPy配列として作成し、pandasのデータフレームに変換することができます。
1 2 3 4 | data = np.array([( 5 , 0.52 ), ( 10 , 1.05 ), ( 15 , 1.57 )], dtype = [( 'r' , float ), ( 'theta' , float )]) df = pd.DataFrame(data) df[ 'x' ] = df[ 'r' ] * np.cos(df[ 'theta' ]) df[ 'y' ] = df[ 'r' ] * np.sin(df[ 'theta' ]) |
このように、pandasを使って極座標系のデータを簡単に直交座標系に変換し、データフレームに変換することができます。
pandasを使った極座標データの統計処理と可視化
pandasを使うと、極座標データの統計処理や可視化を簡単に行うことができます。以下では、極座標データの統計処理や可視化について説明します。
極座標データの統計処理
極座標データの統計処理を行うためには、先ほど作成したデータフレームを使います。例えば、以下のように、df.describe()を使って統計情報を確認することができます。
1 | df.describe() |
この結果は、以下のようになります。
1 2 3 4 5 6 7 8 9 | r theta x y count 3.0 3.000000 3.000000 3.000000 mean 10.0 1.046667 3.108917 8.719543 std 5.0 0.525008 2.700879 6.257920 min 5.0 0.520000 0.011945 2.484401 25 % 7.5 0.785000 2.175520 5.579316 50 % 10.0 1.050000 4.339096 8.674232 75 % 12.5 1.310000 4.657403 11.837114 max 15.0 1.570000 4.975710 14.999995 |
統計情報として、データの個数、平均値、標準偏差、最小値、最大値などが表示されています。
また、以下のように、各列の相関係数を計算することもできます。
1 | df.corr() |
この結果は、以下のようになります。
1 2 3 4 5 | r theta x y r 1.000000 0.999985 - 0.801063 0.999980 theta 0.999985 1.000000 - 0.797760 0.999931 x - 0.801063 - 0.797760 1.000000 - 0.804801 y 0.999980 0.999931 - 0.804801 1.000000 |
また、各列に対して特定の統計処理を行うこともできます。例えば、以下のように、df[‘r’]の平均値を計算することができます。
1 | df[ 'r' ].mean() |
この結果は、以下のようになります。
1 | 10.0 |
このように、pandasを使って極座標データの統計処理を行うことができます。
極座標データの可視化
pandasを使って極座標データを可視化する方法を紹介します。以下では、matplotlibというライブラリを使って極座標データを可視化します。
1 2 3 4 5 6 7 8 | import matplotlib.pyplot as plt fig = plt.figure(figsize = ( 5 , 5 )) ax = fig.add_subplot( 111 , projection = 'polar' ) ax.scatter(df[ 'theta' ], df[ 'r' ]) ax.set_rmax( 20 ) ax.set_rticks([ 5 , 10 , 15 , 20 ]) ax.set_rlabel_position( 0 ) ax.grid( True ) |
上記のコードでは、matplotlibのfig.add_subplot()を使って、極座標系でのプロットを作成しています。ax.scatter()を使って、dfの’r’列と’theta’列を使って散布図を作成しています。
また、ax.set_rmax()を使って、半径の最大値を20に設定し、ax.set_rticks()を使って、半径の目盛りを5、10、15、20に設定しています。
最後に、ax.set_rlabel_position(0)を使って、ラベルの位置を設定し、ax.grid(True)を使って、グリッドを表示します。
以上のコードにより、以下のような極座標データのプロットが作成されます。
このように、matplotlibを使って極座標データを可視化することができます。
極座標データのリサンプリングや補間処理
極座標データのリサンプリングや補間処理を行うためには、scipyというライブラリを使います。以下では、極座標データのリサンプリングや補間処理について説明します。
極座標データのリサンプリング
極座標データのリサンプリングとは、データのサンプリング間隔を変更することです。例えば、以下のように、極座標データのサンプリング間隔を2倍に変更することができます。
1 2 3 4 5 6 7 | from scipy.interpolate import interp1d f = interp1d(df[ 'theta' ], df[ 'r' ]) theta_new = np.linspace(df[ 'theta' ]. min (), df[ 'theta' ]. max (), num = 7 ) r_new = f(theta_new) df_new = pd.DataFrame({ 'r' : r_new, 'theta' : theta_new}) df_new[ 'x' ] = df_new[ 'r' ] * np.cos(df_new[ 'theta' ]) df_new[ 'y' ] = df_new[ 'r' ] * np.sin(df_new[ 'theta' ]) |
極座標データの補間処理
極座標データの補間処理とは、データの欠損部分を推測することです。例えば、以下のように、極座標データの欠損部分を線形補間することができます。
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 | from scipy.interpolate import interp1d df_missing = pd.DataFrame({ 'r' : [ 5 , np.nan, 15 ], 'theta' : [ 0.52 , np.nan, 1.57 ]}) # 欠損値を補間 df_missing = df_missing.interpolate() # 補間されたデータフレームを用いて、新しい関数を作成 f = interp1d(df_missing[ 'theta' ], df_missing[ 'r' ]) # 新しい theta_new の範囲を補間済みデータフレームの範囲に合わせる theta_new = np.linspace(df_missing[ 'theta' ]. min (), df_missing[ 'theta' ]. max (), num = 7 ) # 新しい r_new を取得 r_new = f(theta_new) # データフレームを作成し、座標を計算 df_new = pd.DataFrame({ 'r' : r_new, 'theta' : theta_new}) df_new[ 'x' ] = df_new[ 'r' ] * np.cos(df_new[ 'theta' ]) df_new[ 'y' ] = df_new[ 'r' ] * np.sin(df_new[ 'theta' ]) |
まとめ:pandasを使って極座標データを効率的に扱う方法
この記事では、pandasを使って極座標データを扱う方法について紹介しました。極座標データをデータフレームとして作成し、座標変換を行うことができます。また、pandasを使って極座標データの統計処理や可視化、リサンプリング、補間処理を行うことができます。
これらの機能を使うことで、極座標データを効率的に扱うことができます。極座標データを使う場面がある場合は、ぜひpandasを使ってデータ処理を行ってみてください。